終身保険は法人保険として基本的にオススメできない理由

終身保険とは文字通り一生涯保障が続く保険のことです。

つまり、被保険者が亡くなるまで契約が続くため、死亡保険金が必ず受け取れます。

法人保険で使う生命保険は、一般的には一定期間のみ保障がある定期保険が用いられます。

終身保険は生涯保障が続くというメリットはありますが、それ以外にはさまざまなデメリットがあります。

実際、法人保険として使うには不利な点が多く、特定の限られた条件でしか推奨できません。

今回は法人保険としての終身保険のメリット・デメリットを解説します。

終身保険の特徴

終身保険の特徴として以下が挙げられます。

  1. 保障が生涯続く
  2. 経営者を被保険者とする場合は保険料は全額資産計上
  3. 保険料が高額

1. 保障が生涯続く

終身保険はその名前のとおり、生涯保障が続きます。

そのため、経営者を被保険者としておけば、経営者の家族の方はいずれかのタイミングで必ず死亡保険金を受け取ることができます。

定期的な保険料の支払いさえ続けていれば、必ず回収することができるお金を積み立てることができます。

2. 経営者を被保険者とする場合は保険料は全額資産計上

終身保険を法人保険として使う場合の最大のネックがこれです。

逓増定期保険や長期平準定期保険など、節税目的の法人保険でよく使われる保険では、支払い保険料の1/2を損金に算入することができます。

また、掛け捨て型の定期保険では、支払い保険料の全額を損金にできます。

これらの保険では、保険料の支払いによって損金を作り、法人税の節税を行うことができるわけです。

しかし、終身保険では必ず死亡保険金が支払われるため、資産性の強い保険と見なされます。

そのため、経営者を被保険者として終身保険に加入した場合は、支払い保険料は全額が資産計上となります。

つまり、保険料の支払いによって損金を作ることができないわけです。

保険料の支払いによる損金は法人保険を使った節税の肝です。

支払い保険料を損金にできない終身保険は、法人保険として使うにはとても大きな弱点を持っていると言えます。

3. 保険料が高額

終身保険は必ず死亡保険金が支払われるため、保険料が高額に設定されています。

また、被保険者が健在であればいつまでも保険契約が続くため、長じて支払い保険料の総額は大きくなります。

終身保険では支払い保険料を損金にすることができないので節税メリットもなく、保険料支払いで現金だけが減っていくことになります。

会社が十分な利益を上げていれば問題はありませんが、業績が悪化した場合などにはキャッシュフローをさらに悪化させる要因となるリスクがあります。

終身保険を法人保険として使うのがオススメなケース

以上見てきたとおり、終身保険を節税目的の法人保険として使うことは基本的にオススメできません。

節税目的であれば逓増定期保険や長期平準定期保険、養老保険の方がより少なく保険料負担で、より効率的に節税を行うことができます。

例外的に終身保険を法人保険として使う余地があるのは次のケースです。

経営者が生涯現役を考えており、なおかつ法定相続人となる後継者が事業承継を行うための資金を積み立てたい。

この場合は、被保険者が亡くなったときの死亡保険金を法定相続人となる後継者が受け取ることができるため、事業承継の資金にすることができます。

また、終身保険の高額な保険料を会社が支払うことで、会社の資金を減らすことができるため、会社の評価額が下がって相続税の負担を減らすこともできます。

もちろん、会社が高額な終身保険の保険料を支払うに十分な利益を上げていることは大前提です。

このように、終身保険は使いどころが難しく、法人保険として利用する場合は注意が必要です。

中小企業では会社よりも経営者がお金を持っていた方が良い―資産移転には法人保険の活用を

中小企業では会社の持つお金と経営者個人(とその家族)のお金の区別が曖昧となっているケースも少なくありません。

もちろん、会計上は両者の区別を明確にする必要があり、会社のお金を経営者に移したり、あるいは逆に経営者のお金を会社に移したりを、好き勝手に行うことはできません。

それでは、会社が上げた利益であるお金は、会社と経営者のどちらが持っていた方が良いのでしょうか?

会社がお金を所有していると…

役員報酬を低く設定しすぎると法人税額が増える

会社を経営している場合、お金を稼ぐのは基本的に会社としてになります。

会社が上げた利益から、従業員への給料や施設や設備などの維持費、税金などを引いて残った額から、役員報酬という形で経営者にお金が移されます。

経営者の中には、なるべく会社にお金を残しておいた方が良いと考え、役員報酬を低く設定している方もいます。

しかし、必ずしもそうという訳ではありませんが、役員報酬を過剰に低く設定してしまうことは、却って手元に残るお金が少なくなってしまいます。

なぜなら法人税が増えてしまうからです。

従業員への給料や施設・設備などの維持費など、役員報酬以外の経費と税金を除いた会社の利益が2000万円あるとしましょう。

ここで役員報酬を400万円に設定していたとします。

役員報酬は不相応に高額になると損金算入を否認される可能性がありますが、適切な手続きを踏んで常識的な額にしておけば、全額を損金にすることができます。

400万円の役員報酬を損金とすると、会社に残った利益は1600万円となります。

法人税率を30%とすると、法人税額は480万円。最終的に手元に残る利益は1120万円です。

一方、ここで役員報酬を1000万円とすると、会社の利益は1000万円になります。

法人税率30%で計算すると、法人税額は300万円。最終的に会社に残る利益は700万円です。

会社に残る利益自体は前者の方が大きいですが、その分経営者に多くのお金を移せています。また、後者の方が法人税の負担額が180万円も少なくなっています。

もちろん、経営者の役員報酬を増やす場合は、経営者個人が負担する税金を考慮する必要があります。特に、所得税は累進課税なので、報酬額が大きくなるほど税負担も増えます。

しかし、会社の上げた利益に対して低すぎる役員報酬額は、かえって法人税の負担を増やしてしまい、手元に残るお金が少なくなってしまう可能性があります。

会社の上げた利益に応じて、適切に高い役員報酬額を設定することは大切です。

また、中小企業では会社よりも経営者個人がお金を持っていた方が何かと都合が良いことがあります。その理由を次に説明します。

会社よりも経営者個人がお金を持っておいた方がよい理由

  1. 会社→経営者よりも経営者→会社の方が、税負担が少ない
  2. 新しい事業を立ち上げる場合の資金としやすい
  3. 会社の余剰利益が多いと評価額が上がり、相続時に問題となる

1. 会社→経営者よりも経営者→会社の方が、税負担が少ない

会社に十分な資金があるが、経営者個人があまり現金を持っていないと、経営者に現金が必要になった場合に問題となります。

会社から経営者にお金を移すには、役員報酬を増やしたり、役員賞与を増やすなどの方法がありますが、これらは節税という意味ではあまりメリットの多い方法ではありません。

役員報酬を増やすと経営者個人の税負担が増えてしまいます。また、役員賞与は損金にすることができませんので、会社としては節税メリットが全くありません。

一方、経営者が十分な現金を持っており、会社が資金を必要とした場合は、経営者が会社にお金を貸すことで対応することができます。

この場合、会社は将来的に経営者にお金を返す必要があり、また利息分も支払わなければなりませんが、税負担は生じません。

会社と経営者個人の間で現金の移動を行う場合は、経営者→会社の方が有利です。

2. 新しい事業を立ち上げる場合の資金としやすい

経営者が新しい事業を立ち上げ、別の法人を作りたい場合などに、会社の資金を使おうと思えばスムーズにいかない可能性があります。

例えば、ある程度企業の規模が多く、経営者以外の役員の力が大きい場合は、他の役員から会社の資金を使うことを拒否されてしまう可能性も。

これが経営者個人のお金であれば、基本的には経営者一人の判断で資金を使うことができます。

経営者個人でお金を持っておいた方が、さまざまな使い方をするときによりスムーズです。

3. 会社の余剰利益が多いと評価額が上がり、相続時に問題となる

最後の問題は、会社を後継者に相続するときです。

会社にあまりにも余剰利益が多いと、会社の評価額が上がり、相続時の税負担が大きなものとなります。

そのため、会社を相続する際には、なるべく余剰利益を少なくしておいた方が、後継者の負担が減ります。

また、この時も経営者個人でお金を持っておいた方が、後継者が会社の株式を買い集めるときの資金援助などを行えるため、有利です。

会社のお金を経営者に移す場合は法人保険の活用を。

会社のお金を経営者個人に移すには、役員報酬か役員賞与の形になります。

しかし、役員報酬も役員賞与も、高額過ぎると経営者個人の負担する税金が大きくなってしまうため、限度があります。

また、役員賞与はそもそも会社の損金とならないため、節税という点ではメリットがありません。

そこでオススメなのが法人保険です。

ある程度長期間の運用になりますが、法人保険を使えば、節税を行った上で会社のお金を経営者に移転することができます。

特に効果が高いのは、法人保険の解約返戻金を経営者の退職金に充てること。

具体的には「法人保険を使って退職金を積み立てるメリット」で解説していますので、併せてご覧になってください。

養老保険を使った法人税の節税【ハーフタックスプラン】

長期平準保険や逓増定期保険は保険を中途解約することで解約返戻金が支払われるため、法人保険においてよく用いられています。

しかし、この二つの保険には満期解約金がありません。また、満期近くになると解約返戻金の返戻率が急速に下がり始め、最終的に0になってしまいます。

そのため、これらの保険では保険を中途解約することが原則です。

一方、養老保険は解約返戻金があるだけでなく、満期を迎えた場合に同額の満期解約金が支払われます。

中途解約と満期解約のどちらでもお金が支払われるため、貯蓄性・資産性が極めて強いのが養老保険の特徴です。
そして、この特徴を活かして養老保険もまた法人保険として使われてきました。しかし、長期平準保険や逓増定期保険よりも使いにくい部分があるので、養老保険を利用する場合にはより注意が必要です。

養老保険は契約内容によって経理処理が異なる

養老保険の最大の特徴として、経理処理の複雑さが挙げられます。

養老保険は契約内容によって経理処理が大きく変わり、それに伴ってメリットとデメリットも変わります。

具体的な経理処理の違いは下の表のとおりとなります。


被保険者 死亡保険金受取人 満期保険金受取人 経理処理
役員 法人 法人 全額資産計上
役員 被保険者の家族 被保険者 全額損金(給与)
全役員・従業員 被保険者の家族 法人 1/2資産計上1/2損金算入(支払保険料)
一部の役員・従業員 被保険者の家族 法人 1/2資産計上1/2損金算入(給与)

表の上から三番目のパターンは「ハーフタックスプラン」と言われ、昔から養老保険を使った法人税の節税方法として用いられてきました。

以下、それぞれのメリットとデメリットを見てみましょう。

養老保険①のメリットとデメリット

このパターンでは経営者(役員)だけが養老保険に加入し、死亡保険金と満期保険金の両方を法人が受け取ります。
いずれにしても法人が保険金を受け取ることになるので、資産性が強いと見なされ、支払い保険料は全額が資産計上となります。

つまり、保険料の支払いによる法人税の節税メリットは全くありません。

敢えてメリットを言えば、保険料を定期的に支払うことで確実にお金を積み立て、支払われた保険料を経営者の退職金や後継者への事業継承を行う資金に利用できることでしょうか。

もちろん、経営者に万が一のことが起きた場合の保障も得ることができます。

ただし、このメリットは③のパターンでも享受できるため、養老保険の保険料が高額なことを考えるなら、あまりメリットは大きくないと言えます。

養老保険②のメリットとデメリット

経営者(役員)だけが被保険者となり、死亡保険金を経営者の家族、満期保険金を経営者本人が受け取ります。

いずれの場合にも経営者または経営者の家族が保険金を受け取るため、支払い保険料は経営者への給料と見なされます。

会社としては条件を満たせば、支払い保険料を役員報酬として損金に算入することができます。

しかし、経営者としては所得が増えて個人の税負担が増える上に、手取りが増えるわけではないので、手元に残るお金が少なくなってしまいます。

メリットとしては、経営者とその家族に対して個人的な保障を得られることです。特に、中小企業では会社よりも経営者個人がお金を持っていた方が何かと都合が良いので、①のパターンよりはメリットが大きいと言えるかもしれません。

養老保険③のメリットとデメリット

全役員・従業員を被保険者とし、死亡保険金を被保険者の家族、満期保険金を会社が受け取るパターンです。

このパターンは「ハーフタックスプラン」と言われ、養老保険を使った節税では最もオーソドックスな方法です。

メリットとしては、支払い保険料の1/2を損金に算入できることです。また、損金の名目も「支払い保険料」となるため、被保険者個人の税負担が増えるわけではありません。

また、被保険者に不幸がなかった場合は、満期保険金を会社が回収することができます。

デメリットとしては、原則として全役員・従業員が同じ条件で保険に加入しなければならないことです。

もし、一部の役員・従業員だけが保険に加入したり、異なった条件で加入していた場合は、次の④のパターンとなり経理処理が変わります。

養老保険④のメリットとデメリット

契約内容はパターン③と同じですが、保険の加入者が一部の役員・従業員だけとなっている場合はこのパターンになります。

法人の経理処理から見た場合、1/2資産計上、1/2損金算入という点は同じですが、損金の名目が「給料」となります。

そのため、被保険者となった役員・従業員にとっては、所得税・市民税等の個人で負担する税金が増えます。また、所得が増えると社会保険料負担も大きくなるため、会社にとっての負担も増えます。

養老保険を法人保険として使う場合は、ハーフタックスプランが基本

正直に言えば、③のハーフタックスプラン以外の契約内容はクセがあり、法人保険として活用するにはメリットが少ないと言えます。

ハーフタックスプランでは、法人税の節税効果と役員・従業員の福利厚生の充実という二つのメリットがありますので、利用する価値が大きいです。

ただし、養老保険は他の法人保険と比較して保険料の負担が大きくなります。

ハーフタックスプランでは原則として全役員・従業員が保険に加入することが条件となりますので、保険料の支払いによるキャッシュフローの悪化には注意が必要です。

長期平準定期保険を使った法人税の節税

長期平準定期保険は、節税目的の法人保険でよく使われる保険のひとつです。

最大の特徴は解約返戻金が最大になるピーク期間が長く、またピーク期間に達するまでの期間も長いことです。

長期平準定期保険の特徴

  1. 支払い保険料の1/2を損金とできる
  2. 解約返戻金がある
  3. 解約返戻金のピーク期間が長い
  4. 死亡保険金で万が一の場合の保障を確保できる

1. 支払い保険料の1/2を損金とできる

長期平準定期保険では支払い保険料の1/2を損金とすることができます。

なお、支払った保険料の全額の1/2を損金とするのではなく、実際の経理処理はもう少し複雑になります。

具体的には次のとおりです。

①保険契約期間の最初の60%の期間:支払い保険料の1/2を損金、残りの1/2を資産計上
②保険契約期間の残りの40%の期間:支払い保険の全額を損金

また、②では①の期間で資産計上した保険料を、経過期間に応じて取り崩して損金に算入します。

例えば、毎年支払う保険料が200万円、30年契約(保険料の支払い総額6000万円)の長期平準定期保険の例を考えてみましょう。

保険契約から最初の60%の期間(18年間)の経理処理は次のようになります(1年分の経理処理)。

支払い保険料200万円 損金100万円 資産計上100万円

保険契約から残りの40%の期間(12年間)の経理処理は次のようになります(1年分の経理処理)。

支払い保険料200万円 損金200万円 取り崩し分の損金150万円

保険契約から最初の60%の期間に資産計上した保険料の取り崩し分を考慮しなかった場合でも、30年間で支払った保険料6000万円の内、4200万円を損金に算入することができます。

2. 解約返戻金がある

長期平準定期保険はその名前のとおり定期保険の一種で、通常の定期保険には解約返戻金がありませんが、長期平準定期保険は保険を中途解約することで解約返戻金を受け取ることができます。

この特徴の故に法人保険でよく用いられる保険のひとつとなっています。

3. 解約返戻金のピーク期間が長い

解約返戻金として、それまでに支払った保険料の何割が返ってくるかは、「返戻率」という言葉で表します。

例えば、3000万円の保険料を支払っていて、3000万円の解約返戻金が戻ってくるなら返戻率は100%、2400万円しか戻ってこないなら返戻率は80%になります。

そして、解約返戻金の返戻率は、どの時期に保険を解約するかで変わってきます。

解約返戻金が最も高くなる期間を「ピーク期間」と言いますが、保険の契約から何年後にピーク期間に達するかは保険の種類によって異なります。

長期平準定期保険では、このピーク期間に達するまでに20年から30年かかり、法人保険の中では最も運用期間が長くなります。

また、逓増定期保険ではピーク期間に達した後、すぐに返戻率が下がり始めますが、長期平準保険ではピーク期間が長く続くため、保険を解約するタイミングに融通が利きやすいというメリットがあります。

4. 死亡保険金で万が一の場合の保障を確保できる

法人保険を節税に使う場合、節税に関係する仕組みばかり注目してしまいますが、法人保険はそもそも「保険商品」のひとつです。

そのため、保険本来の機能である「万が一のときの保障」もメリットとなります。

長期平準定期保険では、被保険者の方が亡くなった場合に高額な死亡保険金が支払われます。

長期平準定期保険を節税に使う場合、被保険者となるのは原則として経営者ですので、経営者に万が一のことがあった場合の保障を得ることができます。

特に経営者一人の力で会社が維持されているような中小企業では、経営者に不幸があったときに支払われる死亡保険金によって残された家族の方の生活を保障したり、後継者が会社を立て直すときの軍資金を確保することができます。

長期平準定期保険がオススメのケース

長期平準定期保険は解約返戻金が高額になるピーク期間まで20年から30年と長期になります。

そのため、比較的年齢の若い経営者が加入するのに適した保険です。逆に、ある程度高齢の経営者にとっては加入しずらい保険と言えます。

なお、解約返戻金のある法人保険を節税目的で使う場合、満期を迎える前に保険を中途解約することが基本となります。

長期平準定期保険も解約返戻金があるため例外ではありません。

解約返戻金を受け取った場合、そのままでは益金となり、法人税の負担額が増えてしまうため、何らかの経費として使う必要がありますが、具体的には以下のような使い道が考えれます。

  • 経営者の退職金に充てる
  • 大型の設備投資に充てる
  • 決算書の赤字を補てんする
  • 事業承継の準備に充てる

特に退職金について、詳しくは「法人保険を使って退職金を積み立てるメリット」で解説していますので、併せてご覧になってください。

法人保険を使って退職金を積み立てるメリット

中小企業において、経営者の退職金の支払いは一大イベントです。

退職金は税制上優遇されていますので、本来なら役員報酬として経営者に支払うはずだったお金を退職金として積み立てておき、退職時にまとめて支払うことは稀ではありません。

特に、経営者が創業者でもある場合は、退職金の額はかなり高額になります。

経営者に退職金を支払う場合の二つのポイント

中小企業において経営者に退職金を支払う時のポイントは以下の二つに集約されます。

①退職金を予定額どおり積み立てられるか
②節税効果の高い方法で退職金の準備・支給ができるか

①退職金を予定額どおり積み立てられるか

順調に利益を上げていれば問題ありませんが、中小企業の中には会社を維持するのに精一杯という会社も少なくありません。

資金的な余裕がなければ退職金の積み立てもままならず、最終的には経営者に支給する退職金額が予定よりも少なくなってしまう可能性もあります。

従って、確実に退職金を積み立てられる方法で積み立てを行う日宇町があります。

②節税効果の高い方法で退職金の準備・支給ができるか

退職金自体は税制上優遇されていますが、退職金の積み立てにはいろいろな方法があり、どれだけで節税できるかは積み立て方法にかかっています。

退職金の積み立てを行うのであれば、どうせなら節税効果の高い方法で積み立てた方が、最終的に手元に残るお金が多くなります。

法人保険を活用すれば節税効果の高い形で退職金を積み立てられる

上に挙げた①と②の条件を満たす退職金の積み立て方法が、法人保険を使った積み立てです。

まずは法人保険を使った退職金積み立ての流れを説明します。

退職金積み立てで利用するのは、解約返戻金のあるタイプの法人保険です。

このタイプの保険では、支払い保険料の一部(多くは1/2)を損金に算入することができます。

そして、保険を中途解約すれば解約返戻金が支払われるので、支払った保険料を回収することができます。

解約返戻金には損金に算入した保険料も含まれているため、税引き前のお金を再び手元に戻すことができます。

もちろん、解約返戻金を受け取った場合には、法人税の課税対象となってしまうので、解約返戻金を何らかの経費として使う必要があります。

ここで、解約返戻金を役員への退職金に充てれば、再び損金とすることができるため、解約返戻金の受け取りによる法人税の課税分を相殺することができます。

法人保険を利用した退職金積み立てのメリット

法人保険を利用した退職金の積み立ては次のメリットがあります。

①保険料の支払いによって毎年または毎月一定額の積み立てができる
②支払い保険料の一部は損金になるので、法人税を節税できる

①保険料の支払いによって毎年または毎月一定額の積み立てができる

毎年の収益がそれほど安定していない中小企業にとって、現金による退職金の積み立ては難しい場合もあります。

業績が悪化すると思うように退職金を積み立てられず、経営者が退職するときに予定通りの退職金が用意できない可能性も。

また、預貯金の場合、順調に退職金を積み立てていたとしても、何らかの理由で現金が必要になったときに貯金を取り崩さなければいけなくなることもあります。

法人保険を利用すれば、毎年または毎月一定額の保険料支払いが発生するので、その分確実に退職金を積み立てることができます。

また、法人保険は預貯金ほど簡単に現金化できないので、現金が必要になった場合もギリギリまで手をつけずに済みます。

もちろん、保険料の支払いには一定の現金が必要になるため、保険料の支払いを維持できるぐらいの利益は必要です。

②支払い保険料の一部は損金になるので、法人税を節税できる

現金を退職金を積み立てる方法の最大の問題点は、税引き後のお金を積み立てることです。

一方、法人保険で退職金を積み立てる場合、支払い保険料の一部は損金にできるため、税引き前のお金を積み立てることができます。

例えば、経営者の退職金として3000万円を積み立てた例を見てみましょう。

会社の余剰利益を預貯金、つまり現金で積み立てる場合、この3000万円に30%の法人税がかかります。法人税額が900万円になるので、実際に手元に残るのは2100万円です。

退職金として3000万円を用意しようと思うと、約4285万円ほど現金で積み立てる必要があります。

これは一般的な中小企業にとってはなかなか負担の大きな額です。

次に、法人保険で積み立てる場合を見てみましょう。

解約返戻金のある法人保険では、一般的に支払い保険料の1/2を損金にすることができます。

実際にはもう少し複雑で、保険契約期間の最初の60%の期間が1/2損金(残りの1/2は資産計上)、残りの40%の期間が全額損金のようなパターンが多いです。

このパターンで3000万円を積み立てた場合、2100万円が損金となり、900万円が資産計上となります。

資産計上した900万円にかかる法人税は、法人税率を30%ととすると270万円。

解約返戻金で3000万円の保険料を全額回収した場合、手元には2730万円のお金が残ることになります。

現金で積み立てた場合に残るのは2100万円。その差は630万円です。

法人保険を活用した場合の方が、支払う法人税の額が少なくなります。

さらに法人保険なら経営者に万が一のことがあった場合の保障も得られる

法人保険を使って退職金を得らえるメリットは、法人税の節税だけではありません。

法人保険はそもそも「保険」なので、被保険者である役員の方に万が一の不幸があった場合は、高額な保険金が支払われます。

法人保険を利用すれば、法人税の負担を下げられる上に、万が一のときの保障も得られるため、その利用メリットは非常に大きいです。

逓増定期保険を使った法人税の節税

逓増定期保険は解約返戻金のある生命保険で、法人保険を使った節税でよく用いられています。

逓増定期保険の特徴

  1. 支払い保険料の1/2を損金にできる
  2. 解約返戻金がある
  3. 解約返戻金のピーク期間が短い
  4. 保障額が次第に増えていく

1. 支払い保険料の1/2を損金にできる

逓増定期保険は支払い保険料の1/2を損金に算入することができます。

そのため、保険料の支払いによって損金を作り、節税を行うことができます。

注意点としては、被保険者の年齢によっては、保険料の損金算入の割合が1/3や1/4になる場合があることです。

一般的に高齢になるほど算入割合が少なくなります。

また、支払い保険料の1/2を損金に算入と言っても、単純に支払った保険料の総額の半分を損金にするわけではありません。

次のような形での損金算入になります。

①保険契約期間の最初の6割の期間:保険料の1/2を損金算入、残りの1/2を資産計上
②保険契約期間の残りの4割の期間:保険料の全額を損金算入

また、②の期間では①の期間に資産計上した保険料を、②の期間で等分して損金に算入します。

例えば、支払い保険料の総額が3000万円、契約期間が10年のケースを考えてみましょう。

年間の保険料が300万円なので、最初の6年間で支払う保険料は1800万円となります。その1/2の900万円を損金に算入し、残りの900万円を資産計上します。

最後の4年間で支払う保険料は1200万円になりますが、これは全額損金となります。

また、①の期間で資産計上した900万円を4年で等分して損金に算入します。つまり、②の期間では毎年225万円分、資産計上した保険料が取り崩して損金算入することになります。

2. 解約返戻金がある

一般的な定期保険では解約返戻金がなく、保険は掛け捨てとなります。

しかし、逓増定期保険では保険を中途解約すれば解約返戻金を受け取ることができます。

先に見たように、逓増定期保険では支払い保険料の1/2を損金にできますが、この解約返戻金と組み合わせることで大きく節税することができます。

解約返戻金は一部が課税対象となります。

具体的には、受け取った解約返戻金の額から、それまでに支払った保険料のうち資産計上した額を引いた差額が雑収入となり、益金になります。

上に挙げた保険料総額3000万円の例なら、900万円を資産計上しています。

受け取った解約返戻金の額が2940万円(返戻率98%)なら、この900万円を引いた2040万円が課税対象となります。

解約返戻金による2040万円を考慮しても、決算書が赤字となるのであれば法人税は発生しません。

しかし、2040万円を加えることで黒字となるのであれば、その分法人税の負担が増えます。

そのため、解約返戻金を何らかの経費として使うことで、法人税の増加分を相殺する必要があります。

3. 解約返戻金のピーク期間が短い

解約返戻金で、それまで支払った保険料の何割が戻ってくるのかは、「返戻率」で表します。

例えば、支払った保険料の全額が戻ってくるなら返戻率は100%、半分しか戻ってこなければ返戻率は50%です。

この返戻率が最大になる期間を「ピーク期間」と言います。

一般的な法人保険では、解約返戻金の返戻率は山なりカーブを描きながら次第に上昇し、ピーク期間に達します。それから次第に下がっていくため、ピーク期間は比較的長く続きます。

しかし、逓増定期保険ではピーク期間が短く設定されています。

そのため、保険をいつ解約するかの融通が利きにくく、決まった時期に解約できるような運用計画を立てる必要があります。

ピーク期間を過ぎると返戻率がガクっと下がってしまうため、損失となってしまいます。

4. 保障額が次第に増えていく

逓増定期保険の逓増とは、「次第に増えていく」という意味です。

その名前のとおり、逓増定期保険では保障額が次第に高額になっていきます。

例えば、保険加入時点では保障額が1億円だとすると、10年後には3億円と言った感じです。

解約返戻金のあるタイプの法人保険を節税目的で契約する場合、解約返戻金の返戻率がピークになった時点で解約するのが基本です。

また、このタイプの保険では、満期近くになると返戻率が急激に下がり、最終的に0%になってしまうため、通常は満期まで契約を維持しません。

そのため解約ありきの節税目的で使う保険と言えますが、一方で保障の側面も無視しえません。

逓増定期保険は次第に保障額が高額になっていくため、比較的年齢が若く、事業規模もそこまで大きくない経営者が加入し、それから年齢を重ねて事業規模も大きくなっていくのに合わせるという意味では、非常に魅力的です。

ただし、保障額が高額になっていくということで、保険料はやや高めに設定されている点はデメリットと言えます。

逓増定期保険がオススメのケース

逓増定期保険を利用するにあたっての前提条件は、保険料の支払いを行えるだけの十分な利益が出ていることです。

その上で、経営者に万が一のことがあったときの保障を確保しつつ、保険料の支払いで節税を行ったり、解約返戻金を積み立てて退職金の準備をしたい場合にオススメです。

逓増定期保険は保険料が一般的に高額になるため、保険料支払いでキャッシュフローが悪化しないだけの十分な利益を出せていることが大前提です。

一般的な定期保険(解約返戻金なし)を使って節税する

法人保険を使って節税を行う場合は、一般的には解約返戻金のあるタイプを使います。

しかし、法人生命保険では解約返戻金のないタイプもあり、こちらもまた節税に使うことが可能です。

そもそも、定期保険では解約返戻金のないタイプの方が一般的です。

今回は、この一般的な定期保険(解約返戻金なし)を使った節税方法をご紹介します。

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解約返戻金ありの法人保険を使った節税の基本

法人保険を使った節税では、解約返戻金のある保険を使うことが基本となります。

今回は、この解約返戻金を使った節税の基本的な仕組みについて解説します。

解約返戻金を使った節税の仕組み

解約返戻金のある法人保険を使った節税の基本的な流れは次のようになります。

  1. 保険料を支払って損金を作る
  2. 解約返戻金が最も高額になるタイミングで保険を解約
  3. 支払われた解約返戻金を何らかの経費として使う

1. 保険料を支払って損金を作る

法人保険による節税は、まず保険料の支払いから始まります。

保険料を経費として損金に算入することで、法人税の課税所得を減らすことができます。

ただし、利用する法人保険の種類によって、支払った保険料の何割を損金にできるか決まっている点は注意が必要です。

解約返戻金のある法人保険では、一般的に支払い保険料の1/2を損金にすることができます。

残りの1/2は資産計上となり、損金にはなりません。

2. 解約返戻金が最も高額になるタイミングで保険を解約

保険を契約したら、毎年または毎月保険料を支払いつつ、数年から十数年かけて節税を行っていきます。

ある程度年数が経過すると、解約返戻金が最も高額になるピーク期間になります。

このピーク期間に合わせて保険を解約することで、支払い保険料の満額またはほぼ満額に近い解約返戻金を受け取ることができます。

3. 支払われた解約返戻金を何らかの経費として使う

この解約返戻金、実は雑収入となって益金になります。つまり、法人税の課税対象となってしまいます。

正確には、受け取った解約返戻金の総額から、それまでに支払った保険料のうち資産計上した額を引いた差額が益金になります。

解約返戻金を受け取っても決算書が赤字となっている場合は法人税は発生しないので問題ありません。

しかし、解約返戻金を受け取ることで決算書が黒字になったり、黒字の額が増えてしまう場合には、その分法人税の負担が増えてしまうことになります。

そこで、解約返戻金を何らかの経費として使い、損金を増やすことで、法人税の増加分を相殺しなければいけません。
逆に言えば、課税対象となる解約返戻金を経費として使い切ることで、最終的に節税を完成させることができます。

解約返戻金のある法人保険を使った節税の注意点

解約返戻金のある法人保険を使う場合は、特に次の点に注意が必要です。

  1. 支払い保険料の損金算入割合
  2. ピーク期間に解約できるか
  3. 解約返戻金の使い道

1. 支払い保険料の損金算入割合

解約返戻金のあるタイプの法人保険では、多くが支払い保険料の1/2を損金に算入することができます。

しかし、中には1/3や1/4しか損金に算入できないものや、支払い保険料の1円も損金にできないものもあります。

契約する保険の保険料が、どの程度損金とできるのかは事前にしっかりと把握するようにしましょう。

2. ピーク期間に解約できるか

解約返戻金は保険を中途解約することで受け取ることができますが、どれくらいの額が戻ってくるかは解約時期によって異なります。

そして、解約返戻金が最も高額になる期間をピーク期間と言いますが、このピーク期間に保険を解約するのが基本です。

ピーク期間を外れると本来戻ってくるお金が戻ってこなくなります。

保険の種類によっては、ピーク期間が短く設定されているものもあります。また、ピーク期間を外れると極端に解約返戻金の返戻率が下がる保険もあります。

保険契約から何年後にピーク期間になるかは、保険契約時に決まりますので、しっかりとピーク期間に解約できるような運用プランを考える必要があります。

3. 解約返戻金の使い道

決算書が黒字になる場合、解約返戻金を受け取ると法人保険の負担が増えます。

そのため、保険契約時に保険をいつ解約するのか、また解約返戻金をどのように使うのかを、明確にしておく必要があります。

解約返戻金を受け取ってから、さあ何に使おうかと考えていると、適切な使い道が見つからず、不要な設備投資を行ったり、解約返戻金を付ききれずに結局その分法人税を支払うことになってしまったりします。

これでは法人保険を使って節税を行う意味はありません。

解約返戻金のあるタイプの法人保険を使う場合は、その使い道を決めてから契約するのが基本です。

法人保険による法人税の節税メリット

会社は上げた利益に対して法人税を支払わなければいけません。

法人税の税率は近年下がってきているとはいえ、平成29年時点でも30%*ほどあります。

*中小企業では条件を満たせば、15%や19%などの税率になることもあります。

例えば、会社が5000万円の利益を上げていたら、1500万円の法人税が発生するわけです。

経費を計上すれば法人税の負担を減らすことができますが、税金を減らすために不要なモノやサービスを購入することは本末転倒ですね。

そこで利用したいのが法人保険。

法人保険を利用すれば、会社や経営者、従業員にとってのメリットを享受しつつ、法人税を節税することができます。

法人税を使った節税の基本

法人税を使った節税でキーワードとなるのが、次の3つです。

  1. 益金と損金
  2. 保険料
  3. 解約返戻金

1. 益金と損金

法人税は、課税所得に法人税率をかけた額となります。

税金の計算式は複雑なものも多いですが、法人税の課税所得は実にシンプルな次の式で計算できます。

課税所得=益金―損金

益金とは、会社が上げた利益のことです。

売上による利益はもちろん、株券や保険の配当金なども益金となります。

一方、損金とは会社が計上した経費のことです。

従業員に支払った給料や家賃や光熱費だけでなく、会社が負った損失なども損金となります。

法人税の節税においては、益金を減らして、損金を増やすことが基本的な考え方となります。

2. 保険料

保険料は法人保険に加入したら、毎月または毎年支払うものです。

この保険料を損金とすることが法人保険の節税の基本です。

ただし、支払った保険料のうち、どの程度の割合を損金とできるかは、保険の種類や契約内容によって異なります。

節税のための法人保険で利用される保険では、支払った保険料の1/2を損金とできるものが多くなっています。

また、掛け捨てタイプの法人保険では、支払い保険料の全額を損金とすることができます。

一方、死亡保険金も満期保険金も経営者が受け取れるような資産性の強い保険では、支払い保険料を全く損金とすることができず、全額が資産計上となるものもあります。

3. 解約返戻金

解約返戻金とは、保険を中途解約することで支払われるお金です。

どの程度のお金が戻ってくるかは、保険の種類によって異なりますが、法人保険でよく使われる保険では支払い保険料の100%を超えるものもあります。

この解約返戻金を利用すると、損金として計上して法人税の節税を行った保険料を、ほぼ全額回収することができます。

この仕組みを利用することで、本来であれば法人税の課税対象となっていた利益を、「保険料の形で一時的に保険会社に預け」、必要になったときに解約返戻金の形で回収することができます。

注意点としては、解約返戻金は、支払い保険料のうち資産計上した額との差額が益金となり、法人税の課税対象となることです。

例えば、保険料として3000万円を支払い、そのうち1500万円を損金に算入、残りの1500万円が資産計上だったとしましょう。

解約返戻金として3000万円を受け取った場合は、資産計上分の1500万円を引いた、1500万円が課税対象となります。

解約返戻金が全く課税されないと、法人保険を使えばいくらでも節税できてしまうため、これはある意味では当然と言えます。

しかし、だからと言って、解約返戻金を受け取って法人税をそのまま支払えば、全く節税できなかったことになります。

そこで、解約返戻金を何らかの経費として使い切れば、課税分を相殺することができるので、法人税の負担を増やさなくてすみます。

目的に応じて法人保険を使い分けよう

法人保険で最も多く利用されるのは、生命保険です。そのため、法人生命保険という言い方をすることもあります。

しかし、法人生命保険にも実にさまざまな種類の保険があります。

具体的に列挙すると次のとおり。

  • 定期保険(解約返戻金なし)
  • 逓増定期保険
  • 長期平準定期保険
  • 養老保険
  • がん保険
  • 医療保険
  • 終身保険

などなど。

利用する保険の種類によって、損金とできる保険料の割合や解約返戻金のピーク期間の長さ、死亡保険金や満期保険金の有無が異なります。

また、これらの違いに応じて法人の経理処理も異なります。

法人保険を使う理由の多くは節税ですが、それに加えて役員・社員の福利厚生、経営者の退職金の準備、会社の資産の経営者への移転など、複数の目的があるケースも少なくありません。

これらの条件に適した法人保険を選ぶことが、法人保険の運用を成功さえる最初の条件です。