終身保険は法人保険として基本的にオススメできない理由

終身保険とは文字通り一生涯保障が続く保険のことです。

つまり、被保険者が亡くなるまで契約が続くため、死亡保険金が必ず受け取れます。

法人保険で使う生命保険は、一般的には一定期間のみ保障がある定期保険が用いられます。

終身保険は生涯保障が続くというメリットはありますが、それ以外にはさまざまなデメリットがあります。

実際、法人保険として使うには不利な点が多く、特定の限られた条件でしか推奨できません。

今回は法人保険としての終身保険のメリット・デメリットを解説します。

終身保険の特徴

終身保険の特徴として以下が挙げられます。

  1. 保障が生涯続く
  2. 経営者を被保険者とする場合は保険料は全額資産計上
  3. 保険料が高額

1. 保障が生涯続く

終身保険はその名前のとおり、生涯保障が続きます。

そのため、経営者を被保険者としておけば、経営者の家族の方はいずれかのタイミングで必ず死亡保険金を受け取ることができます。

定期的な保険料の支払いさえ続けていれば、必ず回収することができるお金を積み立てることができます。

2. 経営者を被保険者とする場合は保険料は全額資産計上

終身保険を法人保険として使う場合の最大のネックがこれです。

逓増定期保険や長期平準定期保険など、節税目的の法人保険でよく使われる保険では、支払い保険料の1/2を損金に算入することができます。

また、掛け捨て型の定期保険では、支払い保険料の全額を損金にできます。

これらの保険では、保険料の支払いによって損金を作り、法人税の節税を行うことができるわけです。

しかし、終身保険では必ず死亡保険金が支払われるため、資産性の強い保険と見なされます。

そのため、経営者を被保険者として終身保険に加入した場合は、支払い保険料は全額が資産計上となります。

つまり、保険料の支払いによって損金を作ることができないわけです。

保険料の支払いによる損金は法人保険を使った節税の肝です。

支払い保険料を損金にできない終身保険は、法人保険として使うにはとても大きな弱点を持っていると言えます。

3. 保険料が高額

終身保険は必ず死亡保険金が支払われるため、保険料が高額に設定されています。

また、被保険者が健在であればいつまでも保険契約が続くため、長じて支払い保険料の総額は大きくなります。

終身保険では支払い保険料を損金にすることができないので節税メリットもなく、保険料支払いで現金だけが減っていくことになります。

会社が十分な利益を上げていれば問題はありませんが、業績が悪化した場合などにはキャッシュフローをさらに悪化させる要因となるリスクがあります。

終身保険を法人保険として使うのがオススメなケース

以上見てきたとおり、終身保険を節税目的の法人保険として使うことは基本的にオススメできません。

節税目的であれば逓増定期保険や長期平準定期保険、養老保険の方がより少なく保険料負担で、より効率的に節税を行うことができます。

例外的に終身保険を法人保険として使う余地があるのは次のケースです。

経営者が生涯現役を考えており、なおかつ法定相続人となる後継者が事業承継を行うための資金を積み立てたい。

この場合は、被保険者が亡くなったときの死亡保険金を法定相続人となる後継者が受け取ることができるため、事業承継の資金にすることができます。

また、終身保険の高額な保険料を会社が支払うことで、会社の資金を減らすことができるため、会社の評価額が下がって相続税の負担を減らすこともできます。

もちろん、会社が高額な終身保険の保険料を支払うに十分な利益を上げていることは大前提です。

このように、終身保険は使いどころが難しく、法人保険として利用する場合は注意が必要です。

中小企業では会社よりも経営者がお金を持っていた方が良い―資産移転には法人保険の活用を

中小企業では会社の持つお金と経営者個人(とその家族)のお金の区別が曖昧となっているケースも少なくありません。

もちろん、会計上は両者の区別を明確にする必要があり、会社のお金を経営者に移したり、あるいは逆に経営者のお金を会社に移したりを、好き勝手に行うことはできません。

それでは、会社が上げた利益であるお金は、会社と経営者のどちらが持っていた方が良いのでしょうか?

会社がお金を所有していると…

役員報酬を低く設定しすぎると法人税額が増える

会社を経営している場合、お金を稼ぐのは基本的に会社としてになります。

会社が上げた利益から、従業員への給料や施設や設備などの維持費、税金などを引いて残った額から、役員報酬という形で経営者にお金が移されます。

経営者の中には、なるべく会社にお金を残しておいた方が良いと考え、役員報酬を低く設定している方もいます。

しかし、必ずしもそうという訳ではありませんが、役員報酬を過剰に低く設定してしまうことは、却って手元に残るお金が少なくなってしまいます。

なぜなら法人税が増えてしまうからです。

従業員への給料や施設・設備などの維持費など、役員報酬以外の経費と税金を除いた会社の利益が2000万円あるとしましょう。

ここで役員報酬を400万円に設定していたとします。

役員報酬は不相応に高額になると損金算入を否認される可能性がありますが、適切な手続きを踏んで常識的な額にしておけば、全額を損金にすることができます。

400万円の役員報酬を損金とすると、会社に残った利益は1600万円となります。

法人税率を30%とすると、法人税額は480万円。最終的に手元に残る利益は1120万円です。

一方、ここで役員報酬を1000万円とすると、会社の利益は1000万円になります。

法人税率30%で計算すると、法人税額は300万円。最終的に会社に残る利益は700万円です。

会社に残る利益自体は前者の方が大きいですが、その分経営者に多くのお金を移せています。また、後者の方が法人税の負担額が180万円も少なくなっています。

もちろん、経営者の役員報酬を増やす場合は、経営者個人が負担する税金を考慮する必要があります。特に、所得税は累進課税なので、報酬額が大きくなるほど税負担も増えます。

しかし、会社の上げた利益に対して低すぎる役員報酬額は、かえって法人税の負担を増やしてしまい、手元に残るお金が少なくなってしまう可能性があります。

会社の上げた利益に応じて、適切に高い役員報酬額を設定することは大切です。

また、中小企業では会社よりも経営者個人がお金を持っていた方が何かと都合が良いことがあります。その理由を次に説明します。

会社よりも経営者個人がお金を持っておいた方がよい理由

  1. 会社→経営者よりも経営者→会社の方が、税負担が少ない
  2. 新しい事業を立ち上げる場合の資金としやすい
  3. 会社の余剰利益が多いと評価額が上がり、相続時に問題となる

1. 会社→経営者よりも経営者→会社の方が、税負担が少ない

会社に十分な資金があるが、経営者個人があまり現金を持っていないと、経営者に現金が必要になった場合に問題となります。

会社から経営者にお金を移すには、役員報酬を増やしたり、役員賞与を増やすなどの方法がありますが、これらは節税という意味ではあまりメリットの多い方法ではありません。

役員報酬を増やすと経営者個人の税負担が増えてしまいます。また、役員賞与は損金にすることができませんので、会社としては節税メリットが全くありません。

一方、経営者が十分な現金を持っており、会社が資金を必要とした場合は、経営者が会社にお金を貸すことで対応することができます。

この場合、会社は将来的に経営者にお金を返す必要があり、また利息分も支払わなければなりませんが、税負担は生じません。

会社と経営者個人の間で現金の移動を行う場合は、経営者→会社の方が有利です。

2. 新しい事業を立ち上げる場合の資金としやすい

経営者が新しい事業を立ち上げ、別の法人を作りたい場合などに、会社の資金を使おうと思えばスムーズにいかない可能性があります。

例えば、ある程度企業の規模が多く、経営者以外の役員の力が大きい場合は、他の役員から会社の資金を使うことを拒否されてしまう可能性も。

これが経営者個人のお金であれば、基本的には経営者一人の判断で資金を使うことができます。

経営者個人でお金を持っておいた方が、さまざまな使い方をするときによりスムーズです。

3. 会社の余剰利益が多いと評価額が上がり、相続時に問題となる

最後の問題は、会社を後継者に相続するときです。

会社にあまりにも余剰利益が多いと、会社の評価額が上がり、相続時の税負担が大きなものとなります。

そのため、会社を相続する際には、なるべく余剰利益を少なくしておいた方が、後継者の負担が減ります。

また、この時も経営者個人でお金を持っておいた方が、後継者が会社の株式を買い集めるときの資金援助などを行えるため、有利です。

会社のお金を経営者に移す場合は法人保険の活用を。

会社のお金を経営者個人に移すには、役員報酬か役員賞与の形になります。

しかし、役員報酬も役員賞与も、高額過ぎると経営者個人の負担する税金が大きくなってしまうため、限度があります。

また、役員賞与はそもそも会社の損金とならないため、節税という点ではメリットがありません。

そこでオススメなのが法人保険です。

ある程度長期間の運用になりますが、法人保険を使えば、節税を行った上で会社のお金を経営者に移転することができます。

特に効果が高いのは、法人保険の解約返戻金を経営者の退職金に充てること。

具体的には「法人保険を使って退職金を積み立てるメリット」で解説していますので、併せてご覧になってください。