長期平準定期保険を使った法人税の節税

長期平準定期保険は、節税目的の法人保険でよく使われる保険のひとつです。

最大の特徴は解約返戻金が最大になるピーク期間が長く、またピーク期間に達するまでの期間も長いことです。

長期平準定期保険の特徴

  1. 支払い保険料の1/2を損金とできる
  2. 解約返戻金がある
  3. 解約返戻金のピーク期間が長い
  4. 死亡保険金で万が一の場合の保障を確保できる

1. 支払い保険料の1/2を損金とできる

長期平準定期保険では支払い保険料の1/2を損金とすることができます。

なお、支払った保険料の全額の1/2を損金とするのではなく、実際の経理処理はもう少し複雑になります。

具体的には次のとおりです。

①保険契約期間の最初の60%の期間:支払い保険料の1/2を損金、残りの1/2を資産計上
②保険契約期間の残りの40%の期間:支払い保険の全額を損金

また、②では①の期間で資産計上した保険料を、経過期間に応じて取り崩して損金に算入します。

例えば、毎年支払う保険料が200万円、30年契約(保険料の支払い総額6000万円)の長期平準定期保険の例を考えてみましょう。

保険契約から最初の60%の期間(18年間)の経理処理は次のようになります(1年分の経理処理)。

支払い保険料200万円 損金100万円 資産計上100万円

保険契約から残りの40%の期間(12年間)の経理処理は次のようになります(1年分の経理処理)。

支払い保険料200万円 損金200万円 取り崩し分の損金150万円

保険契約から最初の60%の期間に資産計上した保険料の取り崩し分を考慮しなかった場合でも、30年間で支払った保険料6000万円の内、4200万円を損金に算入することができます。

2. 解約返戻金がある

長期平準定期保険はその名前のとおり定期保険の一種で、通常の定期保険には解約返戻金がありませんが、長期平準定期保険は保険を中途解約することで解約返戻金を受け取ることができます。

この特徴の故に法人保険でよく用いられる保険のひとつとなっています。

3. 解約返戻金のピーク期間が長い

解約返戻金として、それまでに支払った保険料の何割が返ってくるかは、「返戻率」という言葉で表します。

例えば、3000万円の保険料を支払っていて、3000万円の解約返戻金が戻ってくるなら返戻率は100%、2400万円しか戻ってこないなら返戻率は80%になります。

そして、解約返戻金の返戻率は、どの時期に保険を解約するかで変わってきます。

解約返戻金が最も高くなる期間を「ピーク期間」と言いますが、保険の契約から何年後にピーク期間に達するかは保険の種類によって異なります。

長期平準定期保険では、このピーク期間に達するまでに20年から30年かかり、法人保険の中では最も運用期間が長くなります。

また、逓増定期保険ではピーク期間に達した後、すぐに返戻率が下がり始めますが、長期平準保険ではピーク期間が長く続くため、保険を解約するタイミングに融通が利きやすいというメリットがあります。

4. 死亡保険金で万が一の場合の保障を確保できる

法人保険を節税に使う場合、節税に関係する仕組みばかり注目してしまいますが、法人保険はそもそも「保険商品」のひとつです。

そのため、保険本来の機能である「万が一のときの保障」もメリットとなります。

長期平準定期保険では、被保険者の方が亡くなった場合に高額な死亡保険金が支払われます。

長期平準定期保険を節税に使う場合、被保険者となるのは原則として経営者ですので、経営者に万が一のことがあった場合の保障を得ることができます。

特に経営者一人の力で会社が維持されているような中小企業では、経営者に不幸があったときに支払われる死亡保険金によって残された家族の方の生活を保障したり、後継者が会社を立て直すときの軍資金を確保することができます。

長期平準定期保険がオススメのケース

長期平準定期保険は解約返戻金が高額になるピーク期間まで20年から30年と長期になります。

そのため、比較的年齢の若い経営者が加入するのに適した保険です。逆に、ある程度高齢の経営者にとっては加入しずらい保険と言えます。

なお、解約返戻金のある法人保険を節税目的で使う場合、満期を迎える前に保険を中途解約することが基本となります。

長期平準定期保険も解約返戻金があるため例外ではありません。

解約返戻金を受け取った場合、そのままでは益金となり、法人税の負担額が増えてしまうため、何らかの経費として使う必要がありますが、具体的には以下のような使い道が考えれます。

  • 経営者の退職金に充てる
  • 大型の設備投資に充てる
  • 決算書の赤字を補てんする
  • 事業承継の準備に充てる

特に退職金について、詳しくは「法人保険を使って退職金を積み立てるメリット」で解説していますので、併せてご覧になってください。

逓増定期保険を使った法人税の節税

逓増定期保険は解約返戻金のある生命保険で、法人保険を使った節税でよく用いられています。

逓増定期保険の特徴

  1. 支払い保険料の1/2を損金にできる
  2. 解約返戻金がある
  3. 解約返戻金のピーク期間が短い
  4. 保障額が次第に増えていく

1. 支払い保険料の1/2を損金にできる

逓増定期保険は支払い保険料の1/2を損金に算入することができます。

そのため、保険料の支払いによって損金を作り、節税を行うことができます。

注意点としては、被保険者の年齢によっては、保険料の損金算入の割合が1/3や1/4になる場合があることです。

一般的に高齢になるほど算入割合が少なくなります。

また、支払い保険料の1/2を損金に算入と言っても、単純に支払った保険料の総額の半分を損金にするわけではありません。

次のような形での損金算入になります。

①保険契約期間の最初の6割の期間:保険料の1/2を損金算入、残りの1/2を資産計上
②保険契約期間の残りの4割の期間:保険料の全額を損金算入

また、②の期間では①の期間に資産計上した保険料を、②の期間で等分して損金に算入します。

例えば、支払い保険料の総額が3000万円、契約期間が10年のケースを考えてみましょう。

年間の保険料が300万円なので、最初の6年間で支払う保険料は1800万円となります。その1/2の900万円を損金に算入し、残りの900万円を資産計上します。

最後の4年間で支払う保険料は1200万円になりますが、これは全額損金となります。

また、①の期間で資産計上した900万円を4年で等分して損金に算入します。つまり、②の期間では毎年225万円分、資産計上した保険料が取り崩して損金算入することになります。

2. 解約返戻金がある

一般的な定期保険では解約返戻金がなく、保険は掛け捨てとなります。

しかし、逓増定期保険では保険を中途解約すれば解約返戻金を受け取ることができます。

先に見たように、逓増定期保険では支払い保険料の1/2を損金にできますが、この解約返戻金と組み合わせることで大きく節税することができます。

解約返戻金は一部が課税対象となります。

具体的には、受け取った解約返戻金の額から、それまでに支払った保険料のうち資産計上した額を引いた差額が雑収入となり、益金になります。

上に挙げた保険料総額3000万円の例なら、900万円を資産計上しています。

受け取った解約返戻金の額が2940万円(返戻率98%)なら、この900万円を引いた2040万円が課税対象となります。

解約返戻金による2040万円を考慮しても、決算書が赤字となるのであれば法人税は発生しません。

しかし、2040万円を加えることで黒字となるのであれば、その分法人税の負担が増えます。

そのため、解約返戻金を何らかの経費として使うことで、法人税の増加分を相殺する必要があります。

3. 解約返戻金のピーク期間が短い

解約返戻金で、それまで支払った保険料の何割が戻ってくるのかは、「返戻率」で表します。

例えば、支払った保険料の全額が戻ってくるなら返戻率は100%、半分しか戻ってこなければ返戻率は50%です。

この返戻率が最大になる期間を「ピーク期間」と言います。

一般的な法人保険では、解約返戻金の返戻率は山なりカーブを描きながら次第に上昇し、ピーク期間に達します。それから次第に下がっていくため、ピーク期間は比較的長く続きます。

しかし、逓増定期保険ではピーク期間が短く設定されています。

そのため、保険をいつ解約するかの融通が利きにくく、決まった時期に解約できるような運用計画を立てる必要があります。

ピーク期間を過ぎると返戻率がガクっと下がってしまうため、損失となってしまいます。

4. 保障額が次第に増えていく

逓増定期保険の逓増とは、「次第に増えていく」という意味です。

その名前のとおり、逓増定期保険では保障額が次第に高額になっていきます。

例えば、保険加入時点では保障額が1億円だとすると、10年後には3億円と言った感じです。

解約返戻金のあるタイプの法人保険を節税目的で契約する場合、解約返戻金の返戻率がピークになった時点で解約するのが基本です。

また、このタイプの保険では、満期近くになると返戻率が急激に下がり、最終的に0%になってしまうため、通常は満期まで契約を維持しません。

そのため解約ありきの節税目的で使う保険と言えますが、一方で保障の側面も無視しえません。

逓増定期保険は次第に保障額が高額になっていくため、比較的年齢が若く、事業規模もそこまで大きくない経営者が加入し、それから年齢を重ねて事業規模も大きくなっていくのに合わせるという意味では、非常に魅力的です。

ただし、保障額が高額になっていくということで、保険料はやや高めに設定されている点はデメリットと言えます。

逓増定期保険がオススメのケース

逓増定期保険を利用するにあたっての前提条件は、保険料の支払いを行えるだけの十分な利益が出ていることです。

その上で、経営者に万が一のことがあったときの保障を確保しつつ、保険料の支払いで節税を行ったり、解約返戻金を積み立てて退職金の準備をしたい場合にオススメです。

逓増定期保険は保険料が一般的に高額になるため、保険料支払いでキャッシュフローが悪化しないだけの十分な利益を出せていることが大前提です。

解約返戻金ありの法人保険を使った節税の基本

法人保険を使った節税では、解約返戻金のある保険を使うことが基本となります。

今回は、この解約返戻金を使った節税の基本的な仕組みについて解説します。

解約返戻金を使った節税の仕組み

解約返戻金のある法人保険を使った節税の基本的な流れは次のようになります。

  1. 保険料を支払って損金を作る
  2. 解約返戻金が最も高額になるタイミングで保険を解約
  3. 支払われた解約返戻金を何らかの経費として使う

1. 保険料を支払って損金を作る

法人保険による節税は、まず保険料の支払いから始まります。

保険料を経費として損金に算入することで、法人税の課税所得を減らすことができます。

ただし、利用する法人保険の種類によって、支払った保険料の何割を損金にできるか決まっている点は注意が必要です。

解約返戻金のある法人保険では、一般的に支払い保険料の1/2を損金にすることができます。

残りの1/2は資産計上となり、損金にはなりません。

2. 解約返戻金が最も高額になるタイミングで保険を解約

保険を契約したら、毎年または毎月保険料を支払いつつ、数年から十数年かけて節税を行っていきます。

ある程度年数が経過すると、解約返戻金が最も高額になるピーク期間になります。

このピーク期間に合わせて保険を解約することで、支払い保険料の満額またはほぼ満額に近い解約返戻金を受け取ることができます。

3. 支払われた解約返戻金を何らかの経費として使う

この解約返戻金、実は雑収入となって益金になります。つまり、法人税の課税対象となってしまいます。

正確には、受け取った解約返戻金の総額から、それまでに支払った保険料のうち資産計上した額を引いた差額が益金になります。

解約返戻金を受け取っても決算書が赤字となっている場合は法人税は発生しないので問題ありません。

しかし、解約返戻金を受け取ることで決算書が黒字になったり、黒字の額が増えてしまう場合には、その分法人税の負担が増えてしまうことになります。

そこで、解約返戻金を何らかの経費として使い、損金を増やすことで、法人税の増加分を相殺しなければいけません。
逆に言えば、課税対象となる解約返戻金を経費として使い切ることで、最終的に節税を完成させることができます。

解約返戻金のある法人保険を使った節税の注意点

解約返戻金のある法人保険を使う場合は、特に次の点に注意が必要です。

  1. 支払い保険料の損金算入割合
  2. ピーク期間に解約できるか
  3. 解約返戻金の使い道

1. 支払い保険料の損金算入割合

解約返戻金のあるタイプの法人保険では、多くが支払い保険料の1/2を損金に算入することができます。

しかし、中には1/3や1/4しか損金に算入できないものや、支払い保険料の1円も損金にできないものもあります。

契約する保険の保険料が、どの程度損金とできるのかは事前にしっかりと把握するようにしましょう。

2. ピーク期間に解約できるか

解約返戻金は保険を中途解約することで受け取ることができますが、どれくらいの額が戻ってくるかは解約時期によって異なります。

そして、解約返戻金が最も高額になる期間をピーク期間と言いますが、このピーク期間に保険を解約するのが基本です。

ピーク期間を外れると本来戻ってくるお金が戻ってこなくなります。

保険の種類によっては、ピーク期間が短く設定されているものもあります。また、ピーク期間を外れると極端に解約返戻金の返戻率が下がる保険もあります。

保険契約から何年後にピーク期間になるかは、保険契約時に決まりますので、しっかりとピーク期間に解約できるような運用プランを考える必要があります。

3. 解約返戻金の使い道

決算書が黒字になる場合、解約返戻金を受け取ると法人保険の負担が増えます。

そのため、保険契約時に保険をいつ解約するのか、また解約返戻金をどのように使うのかを、明確にしておく必要があります。

解約返戻金を受け取ってから、さあ何に使おうかと考えていると、適切な使い道が見つからず、不要な設備投資を行ったり、解約返戻金を付ききれずに結局その分法人税を支払うことになってしまったりします。

これでは法人保険を使って節税を行う意味はありません。

解約返戻金のあるタイプの法人保険を使う場合は、その使い道を決めてから契約するのが基本です。

法人保険による法人税の節税メリット

会社は上げた利益に対して法人税を支払わなければいけません。

法人税の税率は近年下がってきているとはいえ、平成29年時点でも30%*ほどあります。

*中小企業では条件を満たせば、15%や19%などの税率になることもあります。

例えば、会社が5000万円の利益を上げていたら、1500万円の法人税が発生するわけです。

経費を計上すれば法人税の負担を減らすことができますが、税金を減らすために不要なモノやサービスを購入することは本末転倒ですね。

そこで利用したいのが法人保険。

法人保険を利用すれば、会社や経営者、従業員にとってのメリットを享受しつつ、法人税を節税することができます。

法人税を使った節税の基本

法人税を使った節税でキーワードとなるのが、次の3つです。

  1. 益金と損金
  2. 保険料
  3. 解約返戻金

1. 益金と損金

法人税は、課税所得に法人税率をかけた額となります。

税金の計算式は複雑なものも多いですが、法人税の課税所得は実にシンプルな次の式で計算できます。

課税所得=益金―損金

益金とは、会社が上げた利益のことです。

売上による利益はもちろん、株券や保険の配当金なども益金となります。

一方、損金とは会社が計上した経費のことです。

従業員に支払った給料や家賃や光熱費だけでなく、会社が負った損失なども損金となります。

法人税の節税においては、益金を減らして、損金を増やすことが基本的な考え方となります。

2. 保険料

保険料は法人保険に加入したら、毎月または毎年支払うものです。

この保険料を損金とすることが法人保険の節税の基本です。

ただし、支払った保険料のうち、どの程度の割合を損金とできるかは、保険の種類や契約内容によって異なります。

節税のための法人保険で利用される保険では、支払った保険料の1/2を損金とできるものが多くなっています。

また、掛け捨てタイプの法人保険では、支払い保険料の全額を損金とすることができます。

一方、死亡保険金も満期保険金も経営者が受け取れるような資産性の強い保険では、支払い保険料を全く損金とすることができず、全額が資産計上となるものもあります。

3. 解約返戻金

解約返戻金とは、保険を中途解約することで支払われるお金です。

どの程度のお金が戻ってくるかは、保険の種類によって異なりますが、法人保険でよく使われる保険では支払い保険料の100%を超えるものもあります。

この解約返戻金を利用すると、損金として計上して法人税の節税を行った保険料を、ほぼ全額回収することができます。

この仕組みを利用することで、本来であれば法人税の課税対象となっていた利益を、「保険料の形で一時的に保険会社に預け」、必要になったときに解約返戻金の形で回収することができます。

注意点としては、解約返戻金は、支払い保険料のうち資産計上した額との差額が益金となり、法人税の課税対象となることです。

例えば、保険料として3000万円を支払い、そのうち1500万円を損金に算入、残りの1500万円が資産計上だったとしましょう。

解約返戻金として3000万円を受け取った場合は、資産計上分の1500万円を引いた、1500万円が課税対象となります。

解約返戻金が全く課税されないと、法人保険を使えばいくらでも節税できてしまうため、これはある意味では当然と言えます。

しかし、だからと言って、解約返戻金を受け取って法人税をそのまま支払えば、全く節税できなかったことになります。

そこで、解約返戻金を何らかの経費として使い切れば、課税分を相殺することができるので、法人税の負担を増やさなくてすみます。

目的に応じて法人保険を使い分けよう

法人保険で最も多く利用されるのは、生命保険です。そのため、法人生命保険という言い方をすることもあります。

しかし、法人生命保険にも実にさまざまな種類の保険があります。

具体的に列挙すると次のとおり。

  • 定期保険(解約返戻金なし)
  • 逓増定期保険
  • 長期平準定期保険
  • 養老保険
  • がん保険
  • 医療保険
  • 終身保険

などなど。

利用する保険の種類によって、損金とできる保険料の割合や解約返戻金のピーク期間の長さ、死亡保険金や満期保険金の有無が異なります。

また、これらの違いに応じて法人の経理処理も異なります。

法人保険を使う理由の多くは節税ですが、それに加えて役員・社員の福利厚生、経営者の退職金の準備、会社の資産の経営者への移転など、複数の目的があるケースも少なくありません。

これらの条件に適した法人保険を選ぶことが、法人保険の運用を成功さえる最初の条件です。